1st Party Cookieを守るサーバーサイドタギング(SST)とは

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個人情報保護、そしてそのための規制は、3rd Party Cookieにとどまらず、Google Analyticsなど1st Party Cookieにも影響が加わる世界となっています。
特に厳しいAppleのSafariブラウザではITP(Intelligent Tracking Prevention)の機能でCookieの利用が制限されており、うまく対応しないことにはiOSの計測がすべて死んでしまうことにもなりかねません。

Google/Chromeでは”3rd-Patry cookie”を2年以内にブロックする”見込み”として進めており、こちらは1st party cookieへの影響は今のところなさそうです。
他方Apple safariでは”3rd-Patry Cookie”はブロック+”1st-Patry Cookie”は1日で削除、そんな状態にあるわけです。

クッキーのない時代、来つつありますが・・

実はまだまだ、ファーストパーティクッキーについては延命の余地があります。
今回はそのための治療法、サーバーサイドタギング/通称SSTについて解説します。

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1st Party Cookieを守るために

ITPの影響

1st party cookieをすでに利用しているプロダクト、例えば、Google Analyticsについて考えてみます。

ITPのない世界=例えばChromeにおいて、GoogleAnalyticsでは1st Party Cookieによる計測のcookieデータ保持期間はmax2年で設定可能です。
現実的に2年間cookieが変わらないかどうか、という残存の問題はさておき、比較的長期間、広告の言葉で言えば潜在層へのアプローチから顕在化した後の刈り取りまでのコミュニケーション期間全体を追うことができるわけです。

一方、ITPのある世界かつ通常の計測方法ではそうはいきません。
通常・・といいますか特殊な作業をしていない限り、GoogleAnalyticsのタグはjavascriptで生成されています。このjavaScriptによって生成される1st Party Cookieで個々のユーザーを判別・計測しているのがGAなのですが、ITP影響下では24時間でCookieが削除されてしまいます。

月曜日ターゲティングバナーにあたり、水曜日一般KWで検索しリスティングを踏み、土曜日指名検索KWで検索しリスティングでCVした
そんなユーザーのデータは、土曜日分しか保持されず間接効果が分からない状態に陥ってしまうわけです。
かつ、わからないだけであればまだましなのですが、月曜日・水曜日・土曜日でそれぞれ別の人=3人、とカウントされるため、月曜日のターゲティングバナーと水曜日のリスティング一般KWはCVにつながらなかった、と誤った判断につながりかねないわけです。

ITPの影響回避方法

1st party cookieにおいてITPの影響を回避するためには、Javascriptでのタグ発行ではなく、サーバーで発行したCookieを使用する必要があります。
つまり、いつものタグ設定とは少し違った設定が別途必要になってくる、というわけです。

サーバーでタグを発行する方法は2種類あります。
それは、文字通りの意味で自社サーバーでタグを発行する、という方法と、自社サーバーとみなせるサーバーからタグを発行する方法(Server-Side Tagging)です。

Server-Side Taggingについては後述しますので、ここでは自社サーバーでタグを発行する方法の概念をみてみます。
ブラウザで自社サイトが新規ユーザーに開かれた際、ユーザーに付与されている有効期間1日のGAのCookieを自社サーバーで読み取り、有効期間2年の新しいGA Cookieを付与します。その新しいGA CookieをGTMで取得し、GAに送信します。

これによりGAでは有効期間2年間、サーバーで発行されたGA Cookieを活用できることになるのですが、
・設定作業がやや煩雑であり
・自社サーバーに毎回リクエストが飛ぶ仕組みのため負担が大きい傾向
と、実装作業はすこぶる嫌われます。

また、もう一方の手段であるServer-Side Taggingが容易かつ他にもメリットが大きいことから、サーバーでのCookie発行という目的に対し、自社サーバーでのタグ発行という手段はほとんど選ばれることはありません。

Server-Side Taggingとは

Server-Side Taggingの仕組み

サーバーサイドに置いたGTMをブラウザに設置することで、ブラウザから直接サーバー(内のGTM)にデータを飛ばす方式です。
GTMを設定するサーバーはGoogle Cloudの中になるのですが、このGoogleCloudが自社サーバーとして認識されるため、Cookieも自社サーバーから発行されている=保持期間がのびる、というロジックです。

このGTMをサーバーに設定する、という作業はちょっとコツがいりますし、其れを生業に食べているひとたちもいらっしゃるのでここでの詳細は割愛させていただきます。
広告代理店に頼めばマーケティング視点で包括的なコンサルティングから雑務までやってくれますし、GCPベンダーに頼めばシステム中心の言語でやりとりはスムーズかつ安価な可能性もあります。

Server-Side Tagging 対応済プロダクト

Server-Side Taggingの恩恵をうけるのは、Google Analyticsだけではありません。
もちろん、GoogleAnalyticsへの恩恵はそこで分析する以上極めて大きなものですし、GA3/UniversalAnalyticsの終了に伴うGA4/Analytics for propatyへの切り替え時にServer-Side Taggingもあわせて実行することが多いため、Analyticsのことだけを考えてしまうのは仕方のないことです。

・・余談ですが、GA4に切り替えたうえでServer-Side Taggingを導入しないのは本質的に意味不明です。
片手落ち分析をGA4のコンソール(ブラウザ画面)でだけ行いたいのであれば別ですが、触れるデータが限られている=バイアスがかかる上に自由な分析を行うことも難しいので・・

GA4は、BigQueryにデータ連携することで真に活きるプロパティです。
BigQueryにデータをためるのであれば、あるいは分析から示唆を出すのであれば、偏ったデータではなく全数データが欲しいところです。
BigQueryを導入するのであれば、ついでに同様にGoogle Cloudを利用するServer-Side Taggingも実装すれば、BigQueryに全数データが入ります。
一緒に実装してしまいましょう。

話を戻しますと、サーバーサイドタギング、GoogleAdsやDisplay&Video360などのGoogleMarketingPlatformソリューションにくわえ、Facebookも対応しています。
つまり、媒体CVタグに貯めるユーザーデータについても期限を無期限にのばすことができる、機械学習がはかどる・データクリーンルームでの分析が片手落ちにならない、というわけです。

素晴らしいことですね。

Server-Side Tagging導入判断

メリット・デメリット

メリットですが、何と言ってもITP対策です。
サーバーサイドでのタグ発行で、Google Analyticsの計測はもちろんGoogle AdsやFacebookのCVデータ・CVデータを使った各プラットフォーマーの機械学習が維持できることは魅力でしかありません。

また、副次的なメリットとして、わずかですがページ読み込み速度の向上、セキュリティの微強化もあります。
サーバー側でのデータ処理=ブラウザでのデータ処理減、でして、負荷が減るためほんのわずかにページの読み込みが早くなる傾向があるようです。また、ブラウザ上の処理は外部から抜かれかねないのに対し、サーバー側での処理によりセキュリティ・データ保護力はアップします。

逆にデメリットですが、導入には有償サービスが必要であることが挙げられます。Google CloudのAppEngineを利用するのですが、その課金が発生します。とはいえ月1万円レベルで収まることがほとんどですが・・サイトへの来訪者数やPV数次第です。

また、新しく設定しなければならないことが多々あり、そこには様々な知識が必要となるため、導入ハードルかは高いです。社内・社外のいずれでもよいのですがエンジニアリソースが必要となり、それを社外から調達する場合はお金がかかってきます。
とは言えこのお金は基本的に初期費用ですので、そこに踏み出せるかどうか次第ではあります。

まとめ

ITPの世界かつJavascriptタグでの計測では24時間でCookieが削除される。
そのため、同じユーザーであってもCookie削除前後で別のユーザーとして計測されるため、アトリビューション分析がほぼ機能しなくなる。
この機能しなくなる、という点については、
・効果的だった可能性のある広告の効果をプラスで評価できない(CVしたパスの話)
・効果的だった可能性のある広告の効果をマイナスで評価しかねない(CVしていないパスの話)
の2つの意味があり、結果としてSafariユーザーを除外した片手落ち感もある分析に陥ってしまう。

1stPartyCookieを守るための手段は自社サーバーでのCookie発行かServer-Side Taggingが一般的であり、前者は煩雑さ・ランニングのサーバー負荷などの観点から敬遠されがち。

Server-Side TaggingではGoogle CloudにGTMを設定することで、自社サーバー=GoogleCloudとして1st party cookieの寿命を無制限に延長できる。
この寿命の延長はGoogle Analyticsに限らず、Google広告やFacebook広告のCV計測タグにも適用されるため、媒体での精緻な機械学習やデータクリーンルームでのただしい分析にも貢献する。

Server-Side Taggingのその他のメリットで言えば、ページ読み込み速度のわずかな向上やセキュリティの微強化がある。一方デメリットとしては有償サービスが必要なためランニングコストが月1万円レベルでかかる可能性があることや導入のためにベンダーや代理店を使う場合初期費用がかかることが挙げられる。

が、広告施策を実施している場合は機会損失防止・配信効率化のために必須であり、
また、GA4を導入する場合はBigQueryでのデータハンドリングが好ましく、そのデータを全数データにするためのServer-Side Tagging導入はもはやセットともいえる。
Server-Side Tagging、導入に向けてアクションを起こすことが求められている。

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