業界初、博報堂が検索リフトのデータクリーンルーム横断計測サービスをローンチ

広告
頭痛い
この記事は約8分で読めます。

博報堂グループ(博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)がデータクリーンルーム活用の発展形として、指名検索数や競合ワード検索数、さらにはカテゴリーキーワードなどの一般KW検索数を、Google Ads Data Hub・Yahoo! DCR・Twitter DCR・LINE Ads Data Hub・Meta Advanced Analyticsといったデータクリーンルームで分析可能とする、【主要プラットフォーム横断でデジタル広告のサーチリフト効果を可視化する新機能】をローンチ・リリースしました。

今回はそのリリースの中身を解説します。

記事自体はまじめな内容ですので、バランスをとるBGMとして使っていただきながら読み込んでいただけますと幸いです。

終わり方も勉強になります。

広告

リリース要旨

博報堂DYグループの保有する、国内最大級のデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)であるAudienceOneの中に、推定検索データが存在する。

その推定検索データを、Google・Yahoo!・LINE・Meta・Twitterが提供するデータクリーンルームに入れ込み、広告接触による検索リフト効果をデータクリーンルーム横断で算出できる。

なお”検索キーワード”については一定ボリュームさえあれば任意に設定可能かつ時系列での把握も可能なため、
・指名検索数がリフトしたのかどうか
・競合流出が防止できているかどうか
・カテゴリの需要喚起ができているかどうか
・競合検索ユーザーがどの程度自社にスイッチングしたか
など、検索周りで気になる要素はだいたい検証できる。

博報堂の検索データ活用メリット・デメリット

メリット

プラットフォーマー横断が強い

なんといっても、推定とはいえ検索データをプラットフォーマー横断で分析可能な点にあります。
博報堂の生活者DMPにデータが溜まっているようですが、この生活者DMPの一部にはTVCM視聴ログデータや位置情報データ、さらにはデモグラフィックやサイコグラフィックデータもふくまれています。

つまり、各プラットフォーマーの広告に接触することで検索リフトがあったのかどうか、そのリフト効果の横比較はもちろん、TVCMとの重複効果や、広告による検索リフト者の来店寄与率まで、分析の幅は広がっているということです。
くわえて、生活者DMP側のデモグラや興味関心データを使うことで、プラットフォーマーごとに異なるデータの定義や精度を考えることなく全プラットフォーマー横断での生活者分析ができます。

なおデータクリーンルーム横断のメリットは下記記事にまとめています。

時系列解析は難易度が高いが超強い

データクリーンルームでは、その特性上時系列のデータハンドリングが難しい場合やデータソースが提供されていない場合が多いです。
もちろん、広告接触によるアトリビューション効果を可視化するために接触パスを分析して重みづけを行う、程度のことであればできはします。
ですが、パルスを探るような、ユーザーの興味関心=アフィニティの変化と広告や自社へのアクションの変化を把握するものであったり、競合へ興味が移り流出してしまったきっかけや理由を探るようなものであったり、何か状態の変化を明らかにする分析は不得意でした。

が、今回の推定検索データをはじめ、生活者DMP側で下処理したデータをつかえるということは時系列解析ができてしまうということにほかなりません。

広告接触によりカテゴリへの興味がわいた、そんな潜在層を顕在化させる広告効果ははたしてあったのだろうか

競合を検討していたユーザーが広告接触により自社に振り向いてくれた、そんな生活者はいったいどれくらい存在するのか

自社を検討していたユーザーが競合に流れてしまった、そんなユーザーに広告はちゃんと当たっていたのだろうか

スイッチングやカテゴリ興味の発生するタイミング前後で、生活者側の意識・興味関心はどのように変化しているのだろうか

そういった、これまでできなかった分析が、検索データと時系列処理によりできるようになりました。

デメリット・博報堂データで注意しなければならないこと

限られたデータソース

今回のリリースを拝見するに、推定検索データは、博報堂DYグループの保有するAudienceOneに入っているものです。
推定、と書いてありますし、昨今の個人情報保護へのプラットフォーマー対応状況をかんがえますと、GoogleやYahoo!、Amazonなどから直接提供を受けているデータではない、と推察されます。

ですので、あくまで、博報堂グループがとってきた”何かしら”のデータを、”何かしら”の手法で検索数として換算しているものです。

“何かしらの”データ、という点では、通常はそもそもAudienceOneが持っている行動ログデータをつかっている、と考えられます。
AudienceOneが持つ行動ログデータは、楽天のツールのようにブラウザに拡張機能でとってくるわけではなく、AudienceOneタグが埋まっているサイトのデータを蓄積しています。

たとえばキリンのWebサイトにはAudienceOneタグが埋っています(もちろん、ほかのタグも山ほど埋っています)

Cookieの共有先と無効化 | サイトのご利用にあたって | キリンホールディングス
キリンホールディングスのサイトのご利用にあたって-Cookieの共有先と無効化です。

こういった、タグを設置してくれているサイトのデータ、がベースになりますので、タグをうめてくれないAmazonや楽天のデータは入ってきません。ECサイトでの行動ログ、それをもとにした検索行動は分からないわけです。

何かしらの手法で検索数換算、という点では、指定したキーワードの検索結果一覧(の、おそらく上位)に表示されるサイトへの訪問有無にもとづき推定検索ユーザー判定していると考えられます。
正直これは苦しいところで、
・検索結果一覧に出てこなければ検索とみなされない
・細かいキーワードの指定はむずかしい(アフラック と アフラック 保険はおなじページに飛ぶ)
・一位のサイトに埋まっていないと精度が格段に落ちる
といったデメリットを抱えています。

限られたデータクリーンルーム

生活者DMPでもっているKeyの都合だと思われますが、Amazon Marketing Cloud/Amazon Clean Roomに検索データを突合することはできません。
また電通とは異なりdocomo data squareにも対応していないようです。

とは言え、そもそもECサイトでの推定検索数は入っていない(はず)ですので、それに比べればそこまで大きな問題ではありません。

各データクリーンルームでつかえるマッチングキーのまとめはこちら

まとめ

サマリ

博報堂グループでは、推定とは言え検索データを、Amazonを除くプラットフォーマー横断でデータクリーンルームにて分析可能な業界初のサービス提供を始めました。

検索キーワードは任意に設定可能であり、かつ時系列での把握も可能です。
指名キーワードで検索してくれたのかどうかはもちろん、競合キーワード検索者をどれだけスイッチングできたのか、カテゴリ検索者をどれだけ喚起できたのか、そんな広告効果の把握ができます。

勿論それらは、GoogleやTwitterの検索リフト効果を横比較できる、という、プラットフォーマー横断でできます。
また、横断の視点で言えば、スイッチングやカテゴリ興味の発生するタイミング前後で生活者側の意識・興味関心はどのように変化しているか、そんなマーケティング分析にも活用可能です。

素晴らしいサービスである一方、もちろん留意点もあります。
データソースがAudienceOneタグが入っているサイトに限られるため、AmazonやRakutenなどのECサイト内の行動は追えず、認知や検討段階からECサイトで行動する人が多いことを踏まえますと、EC商材を取り扱う企業では片手落ちの分析になってしまいます。
また、検索結果の上位リストを使用している可能性が高いため、上位検索で表示されたサイトにタグが埋っていない場合計測精度が下がってしまいます。

くわえて、複数の検索キーワードを比較する際には、それぞれの検索キーワードで捕捉率が異なると考えられるため、統計的な誤差の大きさもかわってきます。実際には差がないのに差がある、そんな誤認のリスクもあります。

また、現時点で分析できることはサーチリフト分析・検索スイッチ分析・検索ユーザー分析の3つでして、詳細な時系列分析はリリースされていないようです。

このように留意点はあるものの、取り組みとしては一歩先を進みました。ここからどう発展するのか、期待が高まります。

リリースリンク

全文はこちらです。

博報堂DYメディアパートナーズ
「博報堂DYメディアパートナーズ」は、総合メディア事業会社です。人と人とを結びつけるメディアの力で、...

主要プラットフォーム横断でデジタル広告のサーチリフト効果を可視化、検索数を最大化するプラニングを可能に~Digital AaaSから新機能提供開始~

なおAaaSとは広告をserviceとして提供する、博報堂グループの意思表示のことです。
広告とはもともとサービス業なのですがそういった意味ではなく、広告枠売りの仲介から効果最大化の提供という付加価値文脈に移行する、価値を創出していく、そんな意味が込められています。

タイトルとURLをコピーしました