昨今、個人情報保護などの規制で厳しくなるデータ分析環境・・規制を潜り抜けようとプラットフォーマーが知恵を出し、提供しているのがデータクリーンルームです。
この記事では、データクリーンルームとその活用方法の概要をご説明差し上げます。
データクリーンルームとは
ざっくり一文で定義すると
メディアプラットフォーム各社が整備を進める、プライバシーに配慮した新たな広告効果可視化の仕組み(のもととなるデータを触れる環境)
のことです。
今現状、そしてこれからもますます厳しくなってくるデータハンドリング環境について、さまざまな、特にプライバシーセフティなデータを守る、データを触れるようにするための仕組み、ですね。
データクリーンルームがないと、もはや分析がほとんどできなくなってしまいます。。。
語源に帰ると
データ × クリーンルーム の造語です。
もともとクリーンルームとは科学業界で言うところの無菌室を指しています。
クリーンルームの定義ですが、
空気中に浮遊する微粒子や微生物が限定されたレベル以下の清浄度に管理されており、不純物やゴミを持ち込まないようにするための部屋、だそうです。
引用元:https://700700.jp/seizou/work/work01.html
その目的を果たすために、クリーンルームは設計の段階で、細菌や微粒子を外部から取り入れず、内部でも発生させないための工夫がされているそうです。
データクリーンルームで言うところの細菌や微粒子は、”個人情報へのアクセス”を意味しています。
外部を絞る=特定の人間がアクセス可能な、
菌をいれない=プライバシーの保護を意識した環境(サーバーやクラウドなど)
ですね。
基本的には、各プラットフォーマーがその環境を作っています。
まあ現実的に、各プラットフォーマーの中にはIDベースのデータがあってそれをID別で集計できなくしているような環境、が多いかなと。
触れるデータの種類について
データクリーンルームは、用意した人が用意できるデータしか触れません。
例えば、Googleのデータクリーンルーム、Ads Data Hubでは、Google関連の広告(GoogleAds、Display&Video 360、Campaign Manager360、Youtube reserved)データしか通常触れないわけです。
これはこれで意味のある事なのですが、それだけでは分析に深みが出てこなかったり、本当に知りたい生活者の情報接点と行動喚起状況だったりがわからなかったりします。
そこで、データクリーンルームには、”クリーンではない”データを流し込むことができます。
例えば、自社スマホアプリの利用状況や、テレビCM接触ログ、調査会社のパネルデータ、などです。
こういったデータを、デバイスID(ADID)をキーにしてプラットフォーマーデータと突合することで、例えば
このキャンペーン・グループからの流入は課金率が非常に高くLTV貢献が良い
⇒広告配信を強化
テレビとデジタルの重複接触者はCVRが300%高い
⇒テレビCM接触者にデジタル広告配信強化、デジタル投資増額
など、施策の幅が広がっていくわけです。
データクリーンルームの種類
各プラットフォーマーそれぞれでデータクリーンルームが用意されていますが、それぞれ名称が異なります。
名称が異なるだけではなく、微妙に仕様も異なるのですが、大きく考えると”今まで見られなかったデータがみられるようになる”・”1st party dataなど他のデータと掛け合わせ分析ができるようになる”点は同じです。
名称ですが、
Google:Ads Data Hub
略称はADHです。登場が最も早かったこともあり、最も使われているデータクリーンルームの一つですね。
Yahoo!:※代理店により名称が異なる
電通グループではHAKONIWA、博報堂グループではCocoonと名付けています。
LINE:Ads Data Hub
略称はLDHです。LINE版のADH、わかりやすいですね。実際ID環境で言えば、日本人はほぼLINEを使ってますのでこちらの方が信頼度が高い場合もあります。
Twitter:データクリーンルーム
略称はTwitterDCR、ほぼ名前が決まっていないといってもいいのはβ版だからです。正式リリースが待ち遠しいですが、昨今の買収でどうなることやら・・不明瞭です。
Meta(Facebook & Instagram):Advanced Analytics
略称はAAです。Adobe Analyticsと被るので文脈/チームによってはMetaAAとも言います。こちらもβ版で、電通に先行開放されています。
Amazon:Amazon Marketing Cloud
略称はAMCです。AMCは別段データクリーンルームにとどまるものでもないのですが、その一部機能がフィーチャーされています。
データクリーンルームの活用
提供される側:広告主/代理店のメリット
データクリーンルームに様々な制約はありますが、それでも、これまで以上に高度な分析ができる点、各種規制で不安定になりがちな効果測定環境が担保できている点は魅力的です。
特に、高度な分析で言えば、例えば、
Google ADHで、Googleアフィニティ別にImp・Click・CV状況を把握することで、本来どういった人たちに広告を配信していればよかったのか(どういう特性を持つ人たちが自社商品/サービスと相性がいいのか)を深掘りしたり、
テレビ視聴ログデータと突合することで、例えばLINE上の広告はどれだけテレビCMのリーチを補完する効果があったのかを調べたり、
テレデジ重複接触者とテレビのみ接触者で、自社商品に対する認知度がどれだけ異なるのかを知ることでデジテレ重複効果を知ることができたり、
メディアのPDCA、マーケティングのPDCAに活用できるしさが多数見つかります。
提供する側:プラットフォーマーのメリット
これまでできていた分析を、これからも提供し続けられる点、が小さいですが最大のメリットです。
広告効果を透明性をもって示すことが、(アドフラウドがそこまで叫ばれない日本でも)特にダイレクト界隈では必須要件だからです。
また、他プラットフォーマーと比較した際に分析で劣る場合、似たような広告メニューがあればちゃんと分析できる方を選ぶ(自社出稿が減る)可能性もあるわけで、そこへのケアですね。
加えて、データクリーンルームとしてデータアクセス環境を開放することで、広告主や代理店とのソリューション開発につながったりもします。
ビジネス的なスケールまで狙える点も大きいです。
まとめ
データクリーンルームは、プライバシーセーフティ/セキュア×柔軟なデータ分析が可能なデータアクセス環境のこと
各プラットフォーマーが様々な呼び方で自社のデータクリーンルームを提供している
データクリーンルームを使うことで、これまで以上に高度で有意義な分析が可能になる