広告キャンペーンを実施していく際、顕在層に向けたものであればそれは行動指標、具体的にはサイト来訪・商品詳細やカート投入など特定マイクロCV・CV完了などで測るのが良いでしょう。すでにニーズがある人を行動させてこそ、です。
ですが、潜在層、これから顧客になってくれる可能性があるような人に事前にあPtるすることでニーズ発生時に行動してもらいたい、そんな意図を持っているとき。
あるいは、顕在層への施策であっても競合製品との併売状況をなんとかこちら側に天秤を傾けたい、3回に1回の自社製品購入頻度を2回に1回に引き上げたい、そんなとき。
行動指標で代替的に計測することも不可能ではありませんが、少し不自由することになります。
出来れば、意識指標で測ってしまいたい。
そんなニーズを満たすのが、調査会社の調査パネルです。
今回はメディア接触有無×調査が可能な調査パネルについて、代表的な2社を比較していきます。
代表的な調査会社
マクロミル
言わずと知れた調査会社の最大手、パネル数は自社130万人+連携パネルネットワーク860万人と、1,000万人に近い(といっても日本人の10人に1人が調査会社に登録しているとは考えづらいためパネル間重複はあるはず)そうです。
かつ、何といってもパネルの品質・・・スクリーニング調査であっても変な回答がないこと、しっかり市場を代表させることができることがマクロミルの何よりの強みです。
モニタ登録時だけでなく、週1でのモニタ情報チェック、年1などの頻度で不正回答チェックなど、体制がしっかりしています。
その分、費用感は比較的高めです。
この費用感は、単に調査を投げるということだけでなく、調査前のヒアリングや調査票作成、調査後のレポートまで含め、全体的にレベル感が高いことにも起因しています。
ほかの会社さんだと調査後の分析・集計は自分でやった方が早かったりするのですが、マクロミルさんだと調査前から意図を共有できているので、一次集計と事実ベースのppt作成をお願いし、そこに考察や別途データを加えたほうが早かったりします。
楽天インサイト
楽天では各グループ共通の「楽天ID」に紐づいた調査利⽤が可能です。
それはつまり、楽天グループが保有する「⾏動データ」(楽天市場内の買い物や楽天トラベルでの旅行など)と楽天インサイトが保有する「意識データ」を組み合わせた、IDベースの強⼒なシングルソースでの⽣活者⾏動分析ができるということ。
証券・銀行のデータもつながっていると言われていますが、その利用にはかなりの制限がかかります。
また、全行動データに共通で、楽天経済圏の中のものしか取れません。Amazonやドラッグストアでの買い物やマネックス証券での売買など、楽天内のデータを完全に信じていいのかどうか、顧客を代表するとみなしてよいのかどうかは注意が必要です。
楽天リサーチの特徴は、大きく3つです。
パネルが多い・コストが安い・楽天データとの掛け合わせができる、それにつきます。
パネル数ですが、アンケートモニターは業界最大級の220万人、うちADID/IDFA紐付きは170万人だそうです。
他社と比較してもモニター数が多く、ゆえに接触率の低い広告や出現率の低いサービスでもサンプルが回収できる可能性が高いです。
楽天の中の話、楽天ヘビーユーザー中心で問題ない場合は、きわめて重宝します。
マクロミルvs楽天インサイト 比較
保有データ比較
同一指標ベースで比較しました。
項目 | マクロミル | 楽天リサーチ |
パネル数 | 自社120万人+提携860万人 | 220万人 |
Cookie数 | 90万人 | 220万人※iOS含む |
RDID | 100万人 | 170万人 |
オンライン購買 | 5万人 Amazon,楽天,PayPayモール, メルカリ,Nike.comなど800サイト | 220万人 楽天市場のみ |
オフライン購買 | 3万人 | 15~21万人 |
検索ログ | 不可 | 楽天web検索60万人 |
アプリ利用ログ | 7万人 | 不可 |
パネル数は純粋にその会社だけのパネルで言えば楽天インサイト(旧楽天リサーチ)のほうが多いです。
toBだったりちょっとマニアックな商材について毎月定点調査を行うような場合にはパネル数が少ないと絶望するので楽天リサーチのほうがよさそうです。
RDIDについても同様ですが、こちらは正直50万IDもあれば十分ですので大差ありません。
オンライン購買については、楽天市場のデータだけでいいのであれば楽天インサイト、AmazonやPayPayモールのことも知りたい、モール比較も行いたいのであればマクロミルのほうが良いです。
が、買ったことはありますか?の質問で事足りる場合も少なくありません。ログベースで購買が必要になるかどうかは要検討です。
オフライン購買は、マクロミル・楽天ともレシート撮影ですが、ポイントに強い楽天のほうがパネル数は多いです。
検索ログデータについては、楽天では専用ブラウザで聴取可能ではあるものの、それって本当にGoogle Chromeユーザーと同質なのだろうか、という疑問には答えられません。
アプリ利用ログについては、マクロミルでは許諾取得済ユーザーのアプリ起動ログをとっています。
競合アプリ利用/併用状況や意識との乖離を見ることもできます。
ADH分析時に必要な要素比較
項目 | マクロミル | 楽天インサイト |
RDID | 100万 | 170万 |
費用感 | – | マクロミルより安い(と担当が言っている) |
調査設計の自由度 | 任意 | 任意 |
集計の自由度 | 任意(かつマクロミルからの提案もある) | 任意 |
内部データ突合 | 購買ログ・アプリ起動ログと一部突合可能 | 購買ログとほぼ全部突合可能 |
外部データ突合 | 可能 | 可能 |
楽天インサイトの魅力は何といっても安さにあります。
同じ設問数・調査対象者数であれば、何が何でもマクロミルより安く仕切ってくれます。
かつ、パネル数が多いこと、分析がそこまで型化されていないので柔軟にデータ分析・集計してくれることなどもメリットです。
また、マクロミルとは明確に異なり、RDID(ADID/IDFA)納品にも対応していただけます。※マクロミルは突合結果のみ
つまるところ、こちら側でData Clean Roomを別で契約していれば、そこで自由な分析ができるということです。ADHに限らず、例えばMeta AAであったりLDHであったり・・Campaign Manager360が入らない環境のメディアについても態度変容貢献度が算出できます。
一方のマクロミルですが、アプリ起動ログや800あるサイトの購買ログなどとの突合がメリットです。
加えて、コストがやや高い分サービスも手厚く、調査に不慣れな場合、ADHの分析結果に不慣れな場合などは特にありがたみを感じやすいです。
アウトプットイメージ
まずは広告効果云々の前に、そもそもどれくらいの人に広告が届いたのかを見ます。
接触者計oo%、内訳は~と続くわけです。
独自リーチの量は出稿量にもよるため参考程度ですが、Youtube予約型と運用型でどれだけかぶっているのか、運用型でもTrueViewとBumperでどれだけかぶっているのかなど、プラニング段階のデータと比較すると次回PDCAがより精緻になります。
広告効果を見ていく際には一番大きな枠から見ます。
すなわち、広告接触による効果があったのかなかったのか、です。
広告非接触
広告接触かつクリック無 or 広告接触かつサイト来訪無
広告接触かつクリック有 or 広告接触かつサイト来訪有
といった3segでの比較が多いです。
そして結果はよほどクリエイティブが悪くない限り、見せるだけでも認知効果がある、といったもので落ち着きます。
それが費用対効果としてどうなのかを見ていくわけです。
効果についてブレイクダウンして、メディア別の効果を見ていく流れです。
もちろん上記グラフはクリエイティブ別でも同じことをやるわけですが、重複接触させて良かったのかどうか、それは費用対効果に見合うのか、を見ていきます。
もちろん、内部データを使うことでテレビCMとの重複度合いも見れます。
加えて、FQカットでも見ていきます。
何回接触を狙うべきなのか・・この場合は、8-10回を狙いましょうというよりも、2-4回で十分リフトするのでそこを狙いましょう、となったり、ブランドリフト単価を出して最適なFQを求めたりします。
いずれにせよ、出せる軸/グラフは調査前から見えていて、結果も”どちらかが高い”か”大差ない”の二択しかないので、どんな着地になるにせよレポートも作りやすいものです。
終わりに
態度変容×DCR、メディアのimp効果/接触効果を見ることで潜在層への貢献度も測ることができる、画期的な座組です。
マクロミルと楽天リサーチ、どちらの会社を選んでも望む分析ができる可能性は高いです。
仮に望まない結果が出たとしたらそれは調査会社・調査パネルの問題というよりも、広告出稿量が少なすぎるか、クリエイティブがいけてないかのいずれかだと考えられます。
どちらの会社を選ぶかは、正直その会社で担当についてくれる人のクオリティ次第ではあるのですが、一般的には、
マクロミルは調査初心者や手厚いサポートを求める人、アプリ起動ログや実購買ログとの突合まで求める人、楽天パネルを信用できない人、楽天データだけでは不十分な人向き
楽天リサーチはある程度調査の勝手がわかっている人や費用を安く抑えたい人、楽天市場の詳細なデータが欲しい人(競合商品ページ閲覧など)向き
です。
顕在層を動かすダイレクトマーケティングにとどまらず、潜在層を動かし、さらには市場を創造する、予算配分にバランスを取りつつ、そんな取り組みをしていくのもマーケティング活動の面白さの1つです。
その効果検証としてのデータクリーンルーム活用、おすすめです。