数あるデータクリーンルームの中でもYahoo!の持つDCRの最大の特徴は、IDベースのユーザーリストを広告配信に活用できること、にほかなりません。
この記事では、マーケターが一度は思い描く夢を実現可能な、Yahoo!データクリーンルームを使った施策についてご紹介します。
Yahoo!データクリーンルームとは
概要
詳細は下記記事にまとめていますが、ざっくり、Yahoo!が持つYahoo!ID起点のデータクリーンルームです。
データクリーンルームとしての建付けは業務委託・プロジェクト形式でして、代理店側で自由に触ることはできません。
Yahoo!データクリーンルームの特徴
豊富なデータ量という意味では、あくまでYahoo!ID所有者に限られはするものの、検索データを使えるのは他DCRにはないメリットです。
また、2nd party data・・PayPay決済データを使えるのも特徴の1つです。
3rd party dataとの連携はRDIDベースであるなど、その他のデータ回りに大差はありません。
また、データクリーンルームで分析した結果のIDリストをYahoo!広告で利用可能、ユーザーリストのエクスポートが可能である点はYahoo!にのみある機能です。
その機能があるがゆえに、今回ご紹介するような、潜在層を含むユーザーのナーチャリング、が可能となります。
Yahoo!データクリーンルームの顧客育成活用
なぜYahoo!データクリーンルームを使うのか
ファネルボリュームを把握すること自体は、Yahoo!データクリーンルームを使わずとも難しいことではありません。
当然、調査を回してみてもいいわけです。
ところが、そのファネル別アプローチ・具体的な戦術まで考え始めると、特にファネルの浅い層・潜在層では、いったいどんな人にどんなタイミングでアプローチすればいいのか、ふわふわしてしまうことも少なくありません。
予算が潤沢にあればふわふわターゲティングも許されるのでしょうが、効率を求め寄りシャープに広告配信していくことが求められます。
加えて、効果検証について、もちろんファネル関係なく最終的なCVにつながるかどうかは重要ではあるものの、各ファネルでいきなりCVで評価するのが適切なわけではありません。
潜在層であれば、自社商品を認知してもらうこと。認知者であれば、理解や購買意向を高めることなど、ステップを踏みつつ見込み顧客を育てることが必要です。
Yahoo!データクリーンルームを使うと、シャープなターゲットの把握もファネルごとの育成状況の把握も両方できます。
ゆえに持ち上げられ始めた、というわけです。
できること:市場構造の把握/ファネルの可視化
見込み顧客にアプローチをし、より深いファネルに送り込めたかどうかを図るためにも、市場全体が今どうなっているのか、先月からどう変化しているのかなど、全体をトラッキングできる状態であることは極めて重要です。
Yahoo!IDを使って市場構造を把握するためには、まずは各ファネルの行動をYahoo!保有データで分類する必要があります。
ここでの分類は恣意的に決めることもできますし、Yahoo!側で予測スコアを出してもらいそのスコアを使うことやスコアの裏を分析して特徴に落とし込むこともできます。(Yahoo!予測ファネルの活用)
ファネルが規定できればそのファネルに存在するIDを数えつつ追いかけるだけですので、例えば、
ステージ4は前月比110%、内訳はステージ3からのアップが20pt、ステージ5への送り込みが8pt、他社流出が2pt
といった形で、何がどう変化したのかまで追いかけられます。
できること:ファネル別のアプローチ出し分けと予算管理
各ステージの状況を鑑み、そのステージにあった訴求を選ぶことができます。
また、当然そのステージの中にいるユーザー群ごとに効きやすい訴求を出しわけることも可能です。
ユーザーへの出し分けでは、ステージが上がりそうなユーザー、離脱しそうなユーザーなどの予測データ利用も可能でして、そのあたりで自由なケアが行えます。
もちろん、ステージごとにユーザーが分かれているため予算管理も可能です。
今期は予算達成見込みなのでより浅いファネルにアプローチしていこう、など。。
できること:シグナル対応アプローチ
ファネルが上がる際のシグナル、ファネルが落ちる際のシグナル、ファネルから外れ他社へ流れそうな歳のシグナルを捉え、シグナルユーザーとしてリスト化したうえで広告アプローチをとることができます。
例えば、自社サイト来訪済のステージ4ユーザーがある日突然他社商品名を検索し始めた時、その検索データを捉え、他社流出しないよう比較検討訴求やオファーを出す、など、確実にとどめられるようケア出来ます。
また例えば、カテゴリニュース閲覧者がカテゴリ一般KWで検索し始めたタイミングを捉え、ニュース記事として自社コンテンツを訴求したり一般KWでの入札を極端に強めたりすることもできます。
特に、リスティング一般KWの戦い方として、何も考えなければ高騰していくだけのCPCを憂慮し、リストごとに強弱をつけて運用することができるのは魅力的です。
注意点
ファネル構造は把握できますし、そのファネル構造や変化を踏まえたうえでユーザー群別にメッセージや予算配分などのちょうせいができ、さらにはファネルが変化しそうなシグナルを捉えた広告運用も可能、と極めて万能な印象があるYahoo!データクリーンルーム活用です。
ですが、もちろん完全に万能ではありません。
まず第一に、Yahoo!データクリーンルームの活用は電通か博報堂でなければ現状できません。
独占させることはグローバル機運とは逆行してますしソリューション開発が進んでいかない要因でもあるのですが、これはYahoo!社の戦略ですので仕方のないことです。
第二に、Yahoo!IDデータしか使えません。
この記事を読んでいらっしゃる皆様、Yahoo!ID持ってらっしゃいますか?ログイン済でしょうか?また通常の検索につかうのはYahoo!エンジンでしょうか?
Yahoo!データによる市場構造が本物の市場構造と同じだととらえることに問題はないでしょうか?
この2点をクリアできれば、極めて優秀なソリューションだと考えられます。
市場をコントロールする、マーケターの夢の一つです。